バルシューレの目標

全ての子どもに楽しい身体活動を提供する

世界中の子どもたちにより多くの運動が必要となっています。

子どもの運動遊びは運動能力を高め,基本的な運動パターンの獲得において重要となります.また,子ども期の不活発なライフスタイルは成人期まで維持され,子どもの頃の運動習慣や体力レベルが将来の健康を左右する傾向が見られるようです.さらに,体力や運動能力と認知的能力は肯定的な関係が見られることも多くの研究で報告されています.このようなことから,子どもにとって運動は重要な意義があるといえます.

運動が重要だからと言っても,子どもは勝手により多くの身体活動をしてくれるわけではありません.子どもにとって,楽しみがあり達成感を感じる運動環境が必要です.

バルシューレは,子どもが楽しみながら,そして継続的に多様な運動経験を積むことができるように配慮されたプログラムです.

子どものボールゲーム導入プログラム

子ども年代のボールゲームの選手はどのように育てるべきか? は重大なテーマです.かつての子どもたちは,道路・公園・校庭などで,毎日のように夢中になってボールを追いかけていました.そこでの遊びは,常に同じボールゲーム種目というわけではなく,ゲームの実施条件やプレー人数など多様な環境で行われたはずです.このような日常の遊びは,子どもにとっては,ボールゲームの基礎的スキルをバランスよく,楽しみを感じながら段階的に獲得する最良の環境であり,まさに「自然のボールゲーム教室」といえました.楽しく自由なプレー環境は,直感力や多様な発想力を育み,創造的なプレーが出現しやすい環境でもあります.かつての子どもたちは,「自然のボールゲーム教室」の経験というボールゲームゲームをプレーするための土台を築いた上に,スポーツクラブ等で専門的なトレーニングを行っていました.

今日では,残念ながら「自然のボールゲーム教室」は日常から消えつつあり,子どもたちは最初からチームに所属し,特定の種目の専門的トレーニングを始めることになっています.さらに,そこでのトレーニングでは,しばしば成人チームの雰囲気を彷彿させることもあり,子どもの発達段階や学習段階にそぐわない複雑な内容や過度なフィードバックが見られることがあるようです.つまり,ボールゲームをプレーする土台がないまま,複雑な専門的スキルのトレーニングをしているような状況です.これでは,子どもたちの早期ドロップ・アウトの要因にもなりかねません.

このような背景からバルシューレは,これからボールゲームを始める子どもに適した指導プログラムとして,ドイツ・ハイデルベルク大学スポーツ科学研究所のクラウス・ロート(Klaus Roth)教授によって開発されました.その後,ドイツ国内外に広がりをみせ,日本へは奈良教育大学の木村真知子教授によって普及されるようになりました.

バルシューレでは,かつての子どもたちの日常である「夢中になってボールを追いかけた時間」を現代に取り戻そうというわけではありません.かつての「自然のボールゲーム教室」からエッセンスを取り出し,ボールゲームをプレーする土台(戦術・技術・コーディネーション)を短時間でバランスよく学習するプログラムに変換したものです.このプログラムが,スポーツクラブ等の活動に組んでいくことを望んでいます.